FIREで海外移住するにはいくら必要?初期費用や生活費の詳細と試算しておくべきポイント

FIRE達成後に海外へ移住し、悠々自適なセカンドライフを送るという選択肢が注目されている。中でもビザの要件が緩く物価の安い東南アジアは、移住先として検討したい地域のひとつと言えるだろう。

しかし、たとえ物価の安い海外での生活を送るとしても、日本でこれまで通り暮らすよりも準備する事が多く、初期費用も余計にかかってしまうのが現実だ。

その為、海外移住にかかる初期費用や生活費がどの程度なのかを事前に計算しておかなければ、移住後に資金が底を尽きてしまうという最悪のケースを迎えてしまう可能性がある。

この記事ではFIRE後の海外移住に興味のある人へ向け、初期費用や生活費などをはじめとする必要な費用を具体例も交えて紹介していく。

FIRE実現のための資金を算出する方法

FIREを実現させるために必要な資金は、FIRE理論の4%ルールに則って算出する事ができる。

「4%ルール」とは、年間支出の25倍の資産があれば年利4%の運用益で生活費を賄うことが出来るという考え方だ。

つまり、まずは「年間支出×25」を算出し、それに向けた貯蓄や資産運用をおこなっていく必要がある。

例えば毎月の生活費が20万円で、年間240万円必要な人が4%ルールにのっとった場合は以下のような計算になる。

240万円×25=6,000万円

6,000万円を年利4%で運用すれば毎月240万円の利益が得られるので、元金を減らすことなくFIRE後の生活を続けることが出来る。

これはFIREを検討している人にはよく知られている計算法であり、当サイト管理人である上岡氏の著書や、別に記事にも詳しくまとめているので参考にしてほしい。

FIRE後に海外移住する場合でもこの4%ルールに則って計算すれば良いのだが、海外での生活の場合は生活費が日本とは異なる。

次の章では海外移住の候補地として私がおすすめする東南アジア3か国の一般的な生活費を紹介していく。

海外移住先の生活費はいくら?おすすめ3か国の生活費

私が海外移住先としておすすめする東南アジアの3か国と、各国の一般的な生活費は下記の通り。

  • タイ:約15万円
  • マレーシア:約13万円
  • カンボジア:約13万円

上記には家賃・光熱費・通信費・食費・日用品購入費が含まれており、医療費や保険、娯楽費などは含まれていないと思ってほしい。

どの国も生活費に関しては日本より安く、金額もそこまで変わらない。

しかし生活スタイルによってはその費用が大きく変動するため、各国で生活費が変動しやすいポイントを以下に国別にまとめた。

タイ(生活費約15万円)

バンコクの場合は際限なく娯楽があるため、日々をどのように過ごすかによって娯楽費が大きく変動する。

日本人にとっての娯楽のひとつであるゴルフを例に挙げてみよう。

バンコク近郊のゴルフ場は1回あたり約10,000円~20,000円が相場なので、仮に週2回(月8回)ゴルフへ行く場合10万円前後の追加支出となる。

マレーシア(生活費約13万円)

マレーシアはイスラム教徒の多い国なので飲酒に関する規制が厳しい。外国人に対しては特に制限していないのだが、そもそもお酒を提供できる店が限られているほか、価格もマレーシアの物価に対しては高い設定になっている。

また、アルコール度数の低いビールやカクテルなどはコンビニやスーパーでも購入できるが、ウイスキーやワインなどは限られた店舗でしか販売されていない。

居酒屋やバーなどが好きでよく飲みに出かける人や、ビールよりもウイスキーやワインなどを好んで飲む人は、その分生活コストが上がってしまうことは避けられないだろう。

カンボジア(生活費約13万円)

カンボジアは電気自給率が低い為、他国から電気を買っている。その為、物価の安さと比較すると電気代が高い設定になっている。

単身者の1か月の電気代は5,000円程度が一般的。

特にFIRE後の移住は毎日会社などに行く必要が無い為、自宅にいる時間が増える可能性が高く、冷房を付けっぱなししてしまう機会も多いだろう。

そうなると簡単に月10,000円位まで電気代が跳ね上がってしまう可能性がある。

海外移住の初期費用と毎年かかる費用の目安

ここまでの説明で必要な費用が計算できそうなものだが、少し待ってほしい。

海外移住の場合は、年間の生活費に加えて移住にかかる初期費用と、生活費以外に毎年かかってくる費用も念頭に置いておくことが必要だ。

海外移住の初期費用

海外移住に関わる初期費用の主なものは引っ越し費用や新生活に関わる初期費用だけでなく、ビザの取得費用や海外滞在用の保険なども挙げられる。

それぞれの大まかな費用感を以下にまとめてみた。

■引っ越し費用:20万円~

引っ越しの際は輸送費だけでなく関税がかかる場合もあるため、たとえ量が少なくても国内輸送よりも費用がかかる。

もし日本の家にある家具や家電などを全て持って行くのであれば20万円では到底足りない為、多めに見積もっておく必要があると覚えておこう。

ただし、海外は日本と電圧が異なるため、家電をすべて持って行っても現地で使えない可能性があるし、海外の住居は家具や家電付きの場合も多い。東南アジアに関して言えば冬服や暖房器具も必要無い。

それらを考慮し、現地へ何を持って行くべきか選定する必要があるだろう。

■ビザ取得費用:1万円~

ビザの取得費用は国によるがミニマムで大体1万円。しかし、長期滞在用のビザは年収や貯蓄額の面で制限が付けられている場合が多い。

タイを例に挙げると、50歳以上の人向けのリタイアメントビザの取得費用は1万円程度だが、取得条件として80万バーツ(約360万円)以上の貯蓄の証明が必要だ。

取得のための費用とは別に準備しておくべき費用や証明書などは、各ビザの要件を事前に確認して準備しておきたい。

■生活を整える為の費用:1万円~

これに関してはピンキリだ。日本から生活に必要なものをほぼ全て持ってくる場合は、細々したものを購入するだけで済むが、必要最低限の物だけを持って移住する場合はもちろん現地調達の為の費用がかかる。

しかし、既出の3カ国に関しては家具家電付きの賃貸物件が一般的で、細々した生活用品も安い価格で手に入れることが出来るため、多くを求めなければ何十万もかかるような金額にはならないだろう。

■海外滞在保険加入費用(1年更新):30万円~50万円

最後に必ず検討したいのが海外滞在者向けの保険への加入である。

海外の病院はもちろん日本の保険が適用されない為、全額負担となる。ただの風邪で病院を受診しただけで1万円くらいは軽く飛んでいくし、虫歯1本の治療に何十万円もの費用がかかってしまう。

その為、日本にいるうちに必ず海外滞在者向けの医療保険に加入しておきたい。

毎年かかる費用項目

初期費用の他、毎年かかる費用も生活費に上乗せして試算しておきたい。

以下はその一例である。

  • ビザ・保険の更新費用
  • 一時帰国の費用
  • 日本の家の維持費
  • 日本の各種税金と保険料

ビザや保険の更新は初回取得時と同額がかかると思っておけばいいだろう。

また、移住後に日本に何回くらい一時帰国がしたいかと、それにかかる費用も計画段階から計算に入れておいた方が良いだろう。

日本の住民票を抜かない場合などは、税金の支払いも必要となる。

結局いくらかかる?タイ移住の場合の具体例

ここまでで海外移住に必要な費用を生活費・初期費用・その他のコストに分けておおよその目安金額を説明してきたので、結局いくらかかるかは各々算出できる状態になっているだろう。

最後に私の住むタイを例に挙げ、各費用と年間の支出を具体的に説明していきたい。

尚、各種費用はミニマムで試算している。

【初期費用:52万円】

  • 引っ越し費用:20万円
  • ビザ取得費用:1万円(申請費用のみ)
  • 海外滞在者向けの保険:30万円
  • 生活準備費用:1万円

【年間の費用:231万円+α】

  • 生活費:15万円×12か月=180万円
  • ビザ更新費用:1万円(申請費用のみ)
  • 保険更新費用:30万円
  • 一時帰国費用:20万円(航空券代)
  • その他日本の税金や家の維持費など:家庭によるため+αとする

これらに基づきタイ移住の為に準備しておきたい資産は5,775万円なので、多めに見積もって6,000万円準備しておきたい。これを年利4%で運用すれば年間240万円の利益となるので、上記で+αとして紹介した各種費用も賄えるのではないだろうか。

また、それとは別に初期費用として52万円以上を用意しておきたい。これは移住時にかかるだけなので、運用する必要はない費用である。

まとめ

この記事ではFIRE達成後の海外移住に興味のある人に向け、海外移住で必要な費用について詳しく説明したがいかがだっただろうか。

私がこの記事で伝えたいのは、東南アジアへの移住は日本よりも生活コストは抑えられるが、日本に住んでいれば出ていく事のない支出項目が増えるということである。

類似のトピックスを扱うサイトは多々あるが、生活費のみを試算対象としているケースが多く、実際の支出よりも少ない計算になっていることが多い。

決して他サイトが参考にならないという訳ではないが、自身のライフスタイルや移住後の生活のイメージなどを基に、自身に合った試算をして頂きたい。

著者 石田由希(いしだ・ゆうき)

タイ在住ライター

2017年に念願のタイ移住を果たし、現地の日系人材会社で営業兼キャリアコンサルタントの職務に従事。

ライターとしての活動は2019年より開始し、主にタイの暮らしや海外移住に役立つ情報を国内外のメディアで発信中。自身の移住経験を基に、これから海外移住する方が後悔しないためのリアルな情報発信をモットーに、日々執筆をおこなっている。

これまで寄稿したメディアはタイ関連にとどまらず、国内外の旅行関連、地方自治体、食品メーカー、教育機関など多岐に渡る。

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