FIREで海外移住|メリット・デメリットと失敗しない為に知っておきたい3つのこと
FIRE達成後のライフプランの選択肢の一つとして注目されている海外移住。
「南の島で悠々自適な第二の人生」や、「物価の安い東南アジアなら贅沢な暮らしが出来る」など、ネット上には魅力的な文言に溢れた記事が並んでおり、読んでいるとどれもワクワクした気持ちにさせてくれる。
しかし、タイに7年以上住む私は憧れの移住生活を断念して日本へ帰って行った人にも複数出会っているし、自分自身も苦労した経験がある為、良い面ばかりが取り上げられた発信には疑問を抱く部分もある。
日本以外の国で第二の人生を始める事は魅力やメリットばかりでなく、もちろんデメリットも存在する。
今回は海外へ移住、特に東南アジアへ移住する事のメリットとデメリットを紹介し、それを踏まえた上で移住後に後悔しないために知っておきたい3つのポイントを解説していく。

FIRE達成後に海外へ移住するメリット
発展途上のイメージがある東南アジアだが、バンコクやクアラルンプールなど、各国の首都及び主要都市は日本の地方都市よりも発展しているため、生活面で不便と感じる事は少ない。
首都の場合は現地で働く日本人も多い為、日本人同士の人脈も増やしやすいのが特徴だ。これは東南アジアに限らず、世界のあらゆる国や都市で同じことが言えるだろう。
そんな中で私がメリットとして挙げるのは以下の3点。
- 住宅・生活コストを抑えることが出来る
- 年間を通して温暖な気候で災害も少ない
- 新たな人脈ができ、視野が広がる
それぞれについて話していこう。
住宅・生活コストを抑えることが出来る
東南アジア移住のメリットは、住宅関連費や生活にかかる費用(食費や光熱費など)を抑えることが出来るという点だ。
私の住むタイ・バンコクの場合は、贅沢もせず節約もせず普通に暮らす場合の一般的な生活費が1か月あたり約15万円と言われている。
家賃は住むエリアによってピンキリではあるが、駅近にこだわらなければ5万円くらいでもプール・ジム付きの物件に住むことが出来るし、光熱費や通信費も日本と比較すると非常に安い。
食費についても、ローカル料理は1食250円くらいから食べられるため、どうしても毎食日本の料理が食べたいというこだわりが無い限り、安く済ませる事が可能だ。
年間を通して温暖な気候で災害も少ない
日本は年間の寒暖差が激しく、特に夏と冬は生命の危機を覚える暑さや寒さを感じる地域もある。また、台風や洪水、地震など日本では毎年あらゆる地域で大災害が起こっている。
一方で東南アジアは年間を通して温暖な気候であるため、暑いのが苦手な人でない限り過ごしやすいだろう。
雨季の豪雨や洪水はあるものの、日本の様に年がら年中災害が訪れる訳ではないというのも、東南アジアへ移住する事のメリットだ。
四季が無く年間を通して同じ服を着ることが出来るので、面倒な衣替えも無いし、長い目で見れば衣服にかけるコストも抑えることが出来る。
新たな人脈ができ、視野が広がる
日本のコミュニティから離れて海外で生活をすると、これまで出会って来なかったようなカテゴリの人との出会いがある。
移住先の地元の人はもちろんだが、世界各国からその国へ移住してきた人や、駐在員として赴任している日本人など、様々だ。
様々な理由で海外にいる人と接する事は自身の視野を広げる事に繋がり、そこから新たなビジネスチャンスを見出すことが出来る可能性もあるだろう。
FIRE達成後に海外へ移住するデメリット
魅力の多い海外移住だが、もちろんデメリットもある。
私が感じるデメリットは以下の3点だ。
- 言語面の壁がある
- 為替レートによっては計画時以上のコストがかかる可能性がある
- 日本の家族や友人と疎遠になる
メリット同様に、こちらも解説していこう。
言語面の壁がある
海外移住の最初のデメリットは「言語の壁」である。
外国人居住者の多い都市の場合は英語のわかる人が多い為、表面上のコミュニケーションに関してはそこまで苦労しないだろう。
しかし、何かを契約する際や、電話で問い合わせをする際、深い人間関係を構築する際など、さまざまなシーンで「母国語が話せればなあ」という気持ちになる時が少なからずある。
尚、タイに関して言えば警察や郵便局、政府関係施設などは基本的に英語が通じないため、重要な手続きなどを行う際は一苦労だ。
為替レートによっては計画時以上のコストがかかる可能性がある
円安が騒がれる昨今なので、特にデメリットになってしまうのが為替レートである。
タイを例に挙げると、私が移住した約7年前は1バーツの価格が3~3.3円位だった。しかし、2025年1月時点の1バーツの価格は4.5円前後で推移している。
もし私がFIREで海外移住をと計画して7年前に出てきていたとしたら、今の円安状況にはかなり苦しんでいただろう。
数年後の為替レートを予測する事は出来ないが、このようなリスクがある事を想定し、余裕を持った資金計画を立てておく必要がある。
日本の家族や友人と疎遠になる
当たり前だが、海外に住むと日本の家族や友人に会う機会は減ってしまうことは理解しておこう。
家族の健康面などが心配な場合は、移住の時期やタイミングもしっかり考えるべきである。
友人に関して言えば、海外移住を機に深い仲の友人との関係が切れてしまうという可能性は低いだろう。一方で、あまり大きな声では言えないが、少し面倒だと思っていた人間関係を穏便に切る事ができるのはメリットかもしれない。
海外移住を失敗しない為に知っておきたい3つのこと
最後に、海外移住後に「失敗した」「後悔した」と感じない為に知っておきたい(やっておきたい)3つの事をまとめてみた。
日本の常識は世界の非常識であると理解する
国が違えば文化が違い、常識や価値観も異なる。これまで日本以外の国で生活をした事が無い人は特にこれを理解しておく必要がある。
海外では日本語が通じないのが当たり前で、当然近くに友人や家族もいない。
困った時や何かトラブルに巻き込まれた時などに、日本にいる時と同じような対応が難しい場合がほとんどである。
その事を理解した上で「逆境やトラブルも楽しむ」というマインドが、海外生活では重要になってくると言えるだろう。
余裕を持った資金計画を立てておく
デメリットでも話したが、現在は円安の状況が続いており、これがいつまで続くのかはわからない。また、かつてのような円相場に戻るかどうかも不透明である。
今後さらに円安が加速する可能性もゼロではないということを念頭に置き、資金計画は余裕を持って立てておこう。
FIRE後の海外移住において必要な費用は以下の記事にまとめているので参考にしてほしい。
短期間のお試し移住をする
百聞は一見に如かず。個人的に移住前に必ずやっておくべきことだと思っているのはお試し移住だ。
旅行で訪れて良い印象がある国でも、実際に住んでみるとなると訳が違う。
短期貸しをしているアパートやコンドミニアムを借り、実際の生活を想定しながら暮らしてみる事で、現地での生活をイメージしやすくなる。
当然海外生活のデメリットも肌で感じることが出来るので、果たして本当に海外移住が自分に合っているのかと言う点も判断しやすくなるだろう。
スケジュールに融通が利くようであれば1か月程度は試しに住んでみる事をおすすめしたい。そうすることで、毎月の生活費もイメージしやすくなり、資金計画を立てるのにも役立つだろう。
まとめ
この記事ではFIRE達成後の海外移住について、メリットとデメリットをご紹介した。
キラキラと良いイメージが先行しがちな海外移住だが、デメリットも理解した上で自分にとって現実的かどうかを改めて考えてみる事が大切である。
何事も目標を達成したら終わりとなってしまいがちだが、FIREを達成した後も、海外移住を実現した後も生活は続く。
「FIREしたい」「海外移住した」ではなく、その先に待つ未来をどのような形にしたいのかを想像しながら、後悔しないライフプランを立ててみて欲しい。
著者 石田由希(いしだ・ゆうき)
タイ在住ライター
2017年に念願のタイ移住を果たし、現地の日系人材会社で営業兼キャリアコンサルタントの職務に従事。
ライターとしての活動は2019年より開始し、主にタイの暮らしや海外移住に役立つ情報を国内外のメディアで発信中。自身の移住経験を基に、これから海外移住する方が後悔しないためのリアルな情報発信をモットーに、日々執筆をおこなっている。
これまで寄稿したメディアはタイ関連にとどまらず、国内外の旅行関連、地方自治体、食品メーカー、教育機関など多岐に渡る。