【ホーチミン・グエンフエ42番地】リノベーション費用を抑えた不動産投資―ベトナムのトレンド発信地から学ぶビジネスの秘訣

サブタイトル:新興市場の勢い、真のオーナーマインド、築50年の古アパートはいかにして若者の熱量をレバレッジに変えたか

🌟現代版黄表紙シリーズ作成の舞台裏をご紹介!

1.トレンド発信地グエンフエ42番地と街の変貌

ホーチミン人民委員会庁舎からサイゴン川へとまっすぐに伸びる、全長800メートル弱の目抜き通り「グエンフエ通り」。中央に幅の広いモダンな遊歩道が貫き、その両脇を車道が走る、まさに都市の骨格をなす通りである。訪れた週末の夜、両脇の車道も歩行者天国として開放され、ストリートには眩い光と熱気あふれるイベントが溢れていた。

近代的な高層ビルが立ち並ぶ風景の中で、ひときわ異彩を放つのが「グエンフエ42番地」に佇む古色蒼然としたアパートだ。

 「チー太、あそこを見上げてごらん。ビルの壁面一面が、まるで光のモザイク画のようよ?」

「うわあ、すごい! 古ぼけたビルのベランダごとに違う看板やランタンが並んでいて、若い人たちが楽しそうにお茶を飲んでいるよ! まるでビル全体がおもちゃ箱みたいだね」

隣で感嘆の声を上げるチー太に、レイチはクールな視線を向けながら静かに言葉を返した。

「単なる『映えスポット』として観光気分で眺めているだけでは、資本主義のゲームの本質は見えてこないわ。あの建物には、古い不動産を現代のトレンド発信地へと生まれ変わらせた、見事な仕掛けが隠されているのよ」

2.カフェアパートの熱気と迷宮探検

この建物は1970年代後半に建てられた、本来はごく平凡な9階建ての居住用アパートである。大規模な都市再開発が加速するホーチミンにおいて、取り残されたはずの薄暗い雑居ビルが、今や世界中から旅行者を引き寄せる「カフェアパート(The Cafe Apartment)」として熱狂的な支持を集めている。

路面の本屋の脇にある青い看板をくぐり、薄暗いエントランスへと足を踏み入れる。

入り口のエレベーターの前には長い行列ができている。乗り込もうとすると、係の女性から「3,000ドン(約18円)」の利用料を求められる。もちろん詐欺などではない。古い共有インフラを維持しつつ、観光客の集中をコントロールするための実に合理的な課金システムなのだ(カフェによっては会計時にこの領収書を提示すれば返金してくれる粋な店舗もある)。

「レイチ、エレベーターを待つのももどかしいから、階段で上まで登ってみようよ!」

意気揚々と駆け出したチー太だったが、5階を過ぎたあたりで早くも息が上がり、膝に手を突く羽目になった。熱帯特有の湿気と熱気の中、ひんやりとしたコンクリートの階段を一歩一歩上る行為は、もはや軽いスポーツに近い。

しかし、フロアごとに現れる若手デザイナーのセレクトショップや、ヴィンテージ調の隠れ家カフェの扉が開くたび、そこには個性あふれるスタイリッシュな小宇宙が広がっている。息を切らしながら最上階まで辿り着いたとき、眼下に広がるグエンフエ通りの夜景と、若き起業家たちの情熱が凝縮された空間に、ベトナムの眩しい未来を肌で感じずにはいられない。

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3.不動産オーナー視点で読み解く「四方良し」の要件定義

息を整えながらアイスコーヒーをすするチー太に、レイチが穏やかな口調で語りかけた。

「チー太、この街の圧倒的な熱気の正体がわかる? ベトナムは人口約1億人、しかも平均年齢は30代。まさに国全体が強烈な成長エンジンそのものなのよ。さらに驚くべきは金融環境ね。今、ここの銀行預金金利は9%以上、ほぼ10%にも達しているの。米国債の10年利回りが5%、日本が3%と話題になっている中で、リスク無しの元本保証で約10%よ」 「ええっ!? ただの銀行預金なのに、完全に投資レベルのリターンじゃないか! そりゃあ若者たちも、これからの未来に希望を持って熱気にあふれるわけだ……」

元本保証の無リスク金利が投資レベルである事実にチー太は驚愕した。

「これこそが新興国の圧倒的なモメンタムね。このマクロの成長力を理解した上で、今度はミクロの視点よ」 レイチは個性的なカフェの内装を見渡して問いかけた。

「不動産ビジネスオーナーの視点でこのビルを眺めたとき、何が見えてくる?」

「ええと……立地が良いから、どんな古いビルでも人が集まるってことかな?」

 「それだけなら、ただの立地頼みの博打よ。ここは、不動産賃貸業における『最高傑作』の仕組みを持っているの。住居用と違い、商業ビルの賃貸経営は景気の波に激しく晒されるから難易度が極めて高い。ところが、このビルのオーナーは建物の外壁や薄暗い共用部にはほとんど投資していないわ」

カフェアパートの卓越した構造は、テナントである若い世代に店舗改装の全面的な自由度を与えている点にある。大家自身が莫大なリノベーション資金を抱え込むリスクを負うのではなく、若きクリエイターたちの「表現したい」「店を持ちたい」という熱量と内装資金をレバレッジとして活用しているのだ。 テナントは自らの感性で空間を創り上げて集客し、利益を得る。訪れる世界中の若者は個性的な空間と映える景色を楽しみ、大家は最小限の設備投資で満室経営を維持しながら、エレベーターの手数料すらインカムゲインに変えていく。

「相手にまず得をさせ、他人の熱量と強みを活かして循環を作る。これこそが私の提唱する『四方良し』のドクトリンそのものよ。必死になって自分一人で抱え込まず、6〜7割の余裕を持って構えているからこそ、予期せぬトレンドという時代の波を味方につけることができるの」

4.現代版黄表紙オチ・Reality Check

「なるほど……! 自分の力だけで何とかしようとせず、仕組みを作って相手を勝たせるのが本物のオーナー思考なんだね! よし、僕も古いアパートを一棟まるごと手に入れて、若手クリエイターに丸投げして無限の富の泉を築いてみせるぞ! これで毎朝満員電車に揺られる会社員生活とも完全にお別れだ!」

サイゴン川の風を受けながら、檻からの脱出を夢見て目を輝かせるチー太。その刹那、チー太のポケットの中でスマートフォンが激しく振動した。 画面には、彼が国内で細々と所有している地方中古物件の管理会社からの着信通知が表示されている。 「もしもし……ええっ!? 加古川の物件の給水管が破裂して階下に水漏れ!? しかも入居者さんから『今すぐ何とかしろ』ってクレームが来ている!? ど、どうしよう、今月は本業の国際物流業務も四半期末の船積み手配で手一杯なのに……!

ホーチミンからじゃ何もできないよ〜!」 頭を抱えてパニックに陥るチー太の横で、レイチは涼しい顔で蓮茶を一口すすり、静かに告げた。 「落ち着きなさい、チー太。必死になって取り乱すのは、サラリーマンのOSのままでトラブルを抱え込んでいる証拠よ。まずは緊急対応の手順書をプロンプトに流し込んで、管理会社への一次回答と現地の指定水道業者への相見積もり手配を即座に自動作成しなさい。手作業で慌てる暇があるなら、スクリプトを実行して仕組みに解決させることね。人生にタダ働きというものはないわ。どんな試練も、次の自動化資産を作るための『お題』に過ぎないのだから。Keep Goingよ」

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■著者プロフィール

著者:上岡 健司
AFP(日本ファイナンシャルプランナー協会認定)、宅地建物取引士資格合格
株式会社ユリウス代表取締役

タイ・ベトナムなどアジア3カ国で10年以上の企業経営経験を持つ投資家・メディアオーナー。自社での不動産・金融資産運用を実践しながら、資本主義の構造を活用したライフスタイルを発信中。著書多数。

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