【実録】令和の東京不動産「狂騒曲」

ポストに届く、悲痛な「ラブレター」

今日も私の事務所のポストは、重力に逆らうように膨らんでいる。 溢れ出しているのは、光熱費の請求書でも、親愛なる友人からの手紙でもない。不動産仲介業者、いわゆる「エージェント」たちからの、なりふり構わぬ求愛行動——「物件を売ってください」というチラシの山だ。

私の相棒であるチー太(仕事が忙しすぎて不摂生なネイビーのスーツがパツパツの、育ちの良いチーター)が、そのチラシを一掴みして、エナジードリンクを片手にどんよりとした目で呟く。 「ふぅ……。今日も『相場より高く買います』か。不動産屋さんも大変だね。売るものがないなんて、サバンナで獲物が絶滅したようなものじゃないか」

彼の言う通りだ。今、東京都心の不動産市場は、異常な「空腹状態」にある。

10年で3倍。歪んだ市場の「熱気」

私が10年ほど前に都内で手に入れたワンルームマンションがある。当時は約700万円ほどで、手堅いキャッシュフローを生んでくれる良質な「泉」だった。 ところがどうだ。最近届くチラシには、購入当時の約3倍にもなる金額が提示されているケースもある。

投資額が10年で3倍になる。これだけ聞けば、未経験の投資家は小躍りして売却ボタンを押すだろう。しかし、私はこの現象を「私がモテている」とは解釈しない。これは日本の不動産市場が、決定的に「歪んでいる」証拠なのだ。

彼らは「数字」を追っている。だが、私は「泉(アセット)」を守っている。追いかけるものと、持っているものの視界は違うのだ。

「四方良し」を忘れた、エージェントへの嫌悪感

私がこの手のチラシや電話に対して困るのは、単に「しつこいから」ではない。彼らのビジネスが、私の信条とする「四方良し」から最も遠い場所にあるからだ。

彼らは「高く売れます」と甘い言葉を囁くが、その裏で狙っているのは、転売による手数料稼ぎだ。それが仕事なのだから、当然と言えば当然だが、、

彼らが無理に高値で買い取った物件は、さらに業者の利益が上乗せされ、次の「カモ」に回される。

そのカモにされるのは、往々にして、投資を始めたばかりの真面目なサラリーマンたちだ。ワンルームマンション業者は銀行と組み、こう囁く。 「節税になります」「持ち出しは月々わずかです」「生命保険代わりになります」 これが、彼らの常套句だ。

エリート・サラリーマンが陥る罠

大企業の従業員や公務員という「良い属性」は、本来、レバレッジを掛けて富を築くための最強の武器だ。しかし、知識なき者にとって、それは自分を縛り上げる「最強の鎖」になり得る。

毎月のキャッシュフローが赤字で、どうやって経済的に自立するのか? 赤字の物件を抱え、損益通算のわずかな還付金で喜んでいる間に、彼らは「会社を辞められない奴隷」へと転落していく。不動産屋は売れば逃げるし、銀行は担保を押さえている。リスクを全裸で背負っているのは、自己破産のリスクを負わされたサラリーマンだけなのだ。

「本当の資産は何か?」を知る

私の常識では「毎月のキャッシュフローが赤字のものは、資産(Asset)ではない。負債(Liability)だ」。

このまま不動産が高値を更新すれば、大きな怪我はしないかも知れない。だが、それは『神のみぞ知る』だ。

かつてバブル時代には、不動産はずっと上がるものと思われていた。その後に起きたバブル崩壊は皆が知っているだろう。日本の長い停滞を招いた。

 まとめ:焦ってはダメ

今の東京の不動産価格は、割高だと思う。 「今、東京の不動産に投資しても、十分なキャッシュフローは得られない。なぜなら、価格が異常に高いからだ」

株でも不動産でも、高値掴みをした瞬間に、その投資はリスクが高まる。市場の変化についていく余地が少ない、逃げる余地が少ないと言っても良い。

資産を築くために必要なのは、流行に乗るスピードではない。歪んだ市場の狂騒曲に耳を貸さない、強固な「待つ意思」である。焦ってはダメだ。

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■著者プロフィール

著者:上岡 健司
AFP(日本ファイナンシャルプランナー協会認定)、宅地建物取引士資格合格
株式会社ユリウス代表取締役

中国・タイ・ベトナムなどアジア3カ国で10年以上の企業経営経験を持つ投資家・戦略的メディアオーナー。自社での不動産・金融資産運用を実践しながら、資本主義の構造を活用したライフスタイルを発信中。著書多数。

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