「微笑みの国」はもう安くない?久しぶりのバンコクで痛感した資本主義のリアル(前編) (副題:20年前の駐在時代と「今のタイ」を徹底比較)

はじめに:懐かしのバンコクへ

久しぶりに、バンコクへ出張に行ってきた。 私がバンコクに駐在していたのは、2004年から2009年にかけてのことだ。

中山美穂さん主演の映画『サヨナライツカ』が撮影された時期とちょうど重なる。あの映画の中で描かれているように、当時はまだスワンナプーム空港が開港する前で、ドンムアン空港が空の玄関口だった。かなり古い話だ。

駐在した当時、私も懐かしのドンムアン空港からバンコク入りを果たし、帰国はスワンナプーム空港から日本へ飛び立った。約20年前の駐在当時と比べて、バンコクの街はどう変わったのか、あるいは何が変わっていないのか。今回は、私の実体験ベースで今のバンコクを検証してみたい。

 進化するインフラ:出入国と移動の劇的変化

驚くほどスムーズになった出入国 まず驚いたのが、入国審査のスムーズさだ。 昔は、小一時間ほど長蛇の列に並んで待つのが当たり前だった。しかし今は、事前のオンライン申請登録が導入されたおかげで、あっという間に入国できる。飛行機の中でボールペンを借りて入国書類を書く、あの煩わしい作業も過去のものとなった。

快適すぎる「白タク(Grab)」の普及 移動手段も劇的に変わった。「Grab(グラブ)」という配車サービスが完全に定着している。アプリで呼ぶと、一般の人が運転する個人の車(いわゆる白タク)が迎えに来るのだが、これが普通のタクシーよりはるかに心地良い。知り合いに送迎してもらっているような感覚だ。

昔は、タクシーを止めて運転手とタイ語で交渉しなければならなかった。しかしGrabなら、事前に行き先を入力しているので説明の手間も省けるし、料金も確定済み。現地の友人曰く、普通のタクシーの数は減ったそうだ。

レストランでのキャッシュレス決済 街中ではキャッシュレス化が急速に進んでいる。タイ政府が推進するQRコード決済「PromptPay(プロンプトペイ)」が広く普及しており、もはや現金を持ち歩く必要すらなくなりつつある。

食事情の変化:日本食の価格高騰とタイ人の日常

「かつ丼」一杯が当時の3倍に 食事情の変化も大きい。私がいた頃は、100バーツ程度から日本食のランチが食べられた。当時の為替レート(1バーツ=約3円)で計算すると約300円だ。

今回、現地の「かつや」でかつ丼を食べたのだが、価格は184バーツ。今の為替レート(1バーツ=約5円)で計算すると約920円。日本で食べるよりも高いし、当時と比べて実に約3倍に跳ね上がっている。

かつて、牛丼の「吉野家」が「300円は高すぎる」と一度撤退したバンコクで、今や若いタイ人たちが当たり前のように1,000円近い日本食を楽しみ、店を活気で満たしている。この20年の経済成長を、胃袋から肌で感じる瞬間だった。 (写真:バンコク市内にある『かつや』店舗)

日本文化の熱狂:ジャパンエキスポとMBKのカオス

熱狂的な日本文化の浸透 バンコクで開催されていた「ジャパンエキスポ」にも足を運んでみた。 タイは昔から親日国だが、その熱量はさらに進化している。最寄り駅からすでにコスプレをした若者が溢れ、会場では地下アイドルのコンサートが熱狂的に行われていた。

また、MBK(マーブンクローンセンター)には「アニメイト」が進出している。ブランド品のコピー品を売る店がひしめくカオスな熱気の中に、日本の最新アニメ文化が融合している様は、一昔前の秋葉原のような不思議な活気に満ちていて面白い。(※写真:ジャパンエキスポの風景)

(第1回 終わり)

次回の後編では: 「変わらない渋滞」と「変わらないタイ人の温かさ」に触れつつ、なぜ今、私たちが「日本円の貯金」だけでは生きていけないのか、バンコクの熱気から見えた21世紀の生存戦略(ドクトリン)について切り込みます。ご期待ください。

■著者プロフィール

著者:上岡 健司
AFP(日本ファイナンシャルプランナー協会認定)、宅地建物取引士資格合格
株式会社ユリウス代表取締役

中国・タイ・ベトナムなどアジア3カ国で10年以上の企業経営経験を持つ投資家・戦略的メディアオーナー。自社での不動産・金融資産運用を実践しながら、資本主義の構造を活用したライフスタイルを発信中。著書多数。

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