築地と鉄砲洲で近代日本のルーツを辿る-明治維新の精神を解き明かし、AI時代における生存戦略を練る

中央区の年金事務所での用事があったので、私は地下鉄「築地」駅の地上に出た。都会の喧騒の中、ふと足を止めると、そこには目立たない一つの石碑が佇んでいた。「日本近代文化事始の地」。そこが「慶應義塾発祥の地」であることを、私はその時初めて知った。

三田にあるものだと思い込んでいた学びの舎は、かつての中津藩中屋敷、つまり「組織の内側」から、福沢諭吉と数人の門下生によって産声を上げたのだ。

「蘭学の泉」が日本の文明開化を産んだ

石碑に刻まれた「蘭学の泉はここ」の言葉が、非常に印象的だ

蘭学とは、オランダ語を通じた西洋学問である。鎖国という分厚い壁に囲まれた江戸末期、先人たちはこの地で蘭学という限られた窓を通じて、外の世界の知見を必死に吸収しようとした。

私は、蘭学と言う単語から、直ぐに適塾を連想した。そして、福沢諭吉は、適塾出身だったなと。

適塾とは江戸時代後期に緒方洪庵が大阪で開いた蘭学の私塾で、多くの幕末・明治期の著名人を輩出した教育機関。福沢諭吉、大村益次郎、橋本佐内など適塾で学んだ彼ら英傑たちが、蘭学を「泉」として文明開化の火を灯し、明治維新という巨大なシステムアップデートを成し遂げた。

肖像画が一万円札にも描かれた福沢諭吉を知らない人はいないと思うが、幕末から明治期にかけて活躍した日本の啓蒙思想家・教育者で、慶應義塾大学の創設者として知られる人物だ。

「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」の冒頭で始まる、かの有名な『学問のすゝめ』が代表作。

大村益次郎は、村医者だったにも関わらず、戊辰戦争の勝利に導いた。蘭学と言う、言わば座学を通じて得た知識を駆使して、実際の戦争に勝った村田蔵六は凄いと思う。彼を主人公とした司馬遼太郎著の『花神(かしん)』は、大河ドラマにもなった。私の好きな大河ドラマの一つである。

橋本佐内も医者の出だったが、福井藩主の右腕にまで取り立てられ、様々な改革を実施する。

正に蘭学を泉の力で、日本は文明開化の道を歩んだのだと思う。

投資も座学だけでは勝てない

お金に愛されるためには、まず相手を知らなければならない。 歴史を紐解けば、お金の正体が見えてくる。 かつてお金は「金(ゴールド)」という物理的な裏付けを持っていた(金本位制)。 しかし、ニクソン・ショックを経て、今のお金は「国家の信用と制度」によって成り立っている。

この歴史を知れば、なぜ今、各国の財政不安で通貨の価値が揺らぎ、金や不動産といった「実物資産」が価値を持っているか?が見えてくるはずだ。

そして、知識を得たら「実践」しなければならない。 投資は、国語や数学ではない。「体育」や「音楽」と同じ実技科目だ。 『野球入門』という本を100回読んでも、バットを振らなければヒットは打てない。 少額でもいい。実際に身銭を切ってマーケットに参加し、肌感覚を磨くこと。それが、資産家への唯一の道である。

聖路加タワーから見渡す「資本主義の呼吸」

築地からさらに歩を進めると、マレーシアのツインタワーを彷彿とさせる近代的なビル、聖路加ガーデンが姿を現す。特に、途中の階で繋がっているのが似ていると思うのは、私だけか?マレーシアは住んだことは無いが、バンコク駐在時に、出張で何度か訪れたことがある。私が東南アジアを回っていた当時は、世界一の高さを誇っていたはずだ。当時のマハティール首相が“ルック・イースト政策”を掲げて、日本に関心を寄せてくれていた。日本の停滞、アジアの興隆を経た今、近況がどうなっているのか?また訪れてみたいと思う。

少し調べてみると、聖路加とは、セイント・ルカと言う新約聖書の登場人物の名前が由来らしい。外国語を漢字にするとこうなってしまう典型だなと笑ってしまった。その昔、聖パウロは皇帝ネロのもと斬首刑により殉教し、当時の手紙は口述筆記だったので、聖パウロの絶筆をルカが書き取った。それが、聖パウロの最後の手紙となった。新約聖書の「医者ルカ」に由来するその名称は、幕末から続く西洋文化と日本の融合を象徴しているようだ。

聖路加タワーを登って、地上200メートルを超える展望から佃島周辺を見下ろすと、1590年に徳川家康が大阪から連れてきた漁師たちが切り拓いた古い街並みと、現代の象徴であるタワーマンションが共存しているのが見える。

鉄砲洲稲荷神社の鳥居に感じたもの

築地から聖路加、そして鉄砲洲稲荷神社へと向かった。ここは、江戸時代、日本橋へ入る船が必ず立ち寄った海運の要所。多くの豪商たちが寄進した石碑や鳥居があり、当時の物流を支えた富の集積が感じられる。

築地から聖路加、そして鉄砲洲へと続く道は、単なる観光ルートではない。

それは幕末の情熱から現代の資本形成へと繋がる、「目に見えない地図(Invisible Map)」そのものだ。

・日本開国時の「蘭学の泉」

聖パウロが由来の近代的なビル聖路加タワー

・かつての海運の要所を祭った神社

まとめ:令和の「独立自尊」、AI時代のサバイバル戦略

福沢諭吉は『学問のすゝめ』において、国民の自立には「知識の習得」が不可欠であると説いた。

かつて「武士」という特権階級が終わったように、現代では「終身雇用」という幻想が崩壊した。デフレからインフレへの一変、そしてAIの登場。これまで安泰だと思われていた高学歴のホワイトカラー層こそ、今、生存が危惧されている。

帰路、南町奉行所の同心で、八丁堀に住んでいた(設定)ことから「八丁堀の旦那」と呼ばれた中村主水が住んでいたとされる八丁堀の交差点を通り過ぎた。ふと、昔のテレビ時代劇『必殺仕事人』を懐かしく思い出した。そう言えば、中村主水は表向きには、しがない勤め人だったが、副業??ではプロフェッショナルな人間だった。今求められている“組織に依存しない「独立自尊」の精神”の持ち主そのものだった。

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■著者プロフィール

著者:上岡 健司
AFP(日本ファイナンシャルプランナー協会認定)、宅地建物取引士資格合格
株式会社ユリウス代表取締役

中国・タイ・ベトナムなどアジア3カ国で10年以上の企業経営経験を持つ投資家・メディアオーナー。自社での不動産・金融資産運用を実践しながら、資本主義の構造を活用したライフスタイルを発信中。著書多数。

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